Master Class Vol.1「Approach to Improvisation / インプロビゼーションのアプローチ」

2020/9/1(Tue)

レポート:畠中真濃

☆大手可奈「Gaga/dancer・オハッド・ナハリンのダンスメソッド」

 Gagaクラスは講師によって雰囲気が異なるとよく聞きますが、大手可奈さんのクラスは感覚について理論が組み立てられていてわかりやすいという印象を受けました。クラス中の言葉で主に印象的だったのは、「重力に対して少しだけ反発すると水平の動きがうまれる」こと、「重力を砂のように地面へ流す」こと、「次にどこを動かすか考えない」ことでした。この三つから、いかに自分が辛く不自由な方向へ頑張ってしまっていたかを実感できました。

 特に二つ目の重力を地面へ流すというのは、私自身にとってとても身になる考え方でした。私は軸足を踏ん張って体重を支えるような踊り方をしていたので、長時間踊ると足がかなり疲れてしまうことがよくありました。そして今回、重力を地面へ流すこと、私の解釈ではつまり、重力に対して抵抗して踏ん張らないこと、を意識すると筋肉で身体を支えているという感覚がなくなりました。しかしこれは重力に対してまったくの無抵抗であるという意味ではありません。前述の一つ目にある、重力に対するほんの少しの反発、そこからうまれる水平の動きを利用すると、より発展させられます。大手さんはこのことを「重力に形を作らせない」と仰っていました。これは私個人の感覚ですが、身体のすべての部位をアクティブな状態にし、地面や空気、重力などの様々な刺激を受け止めることで動きはうまれるのだと感じました。そしてこの状態であれば、三つ目の「次にどこを動かすか考えない」場合でも身体が反応することができるのではないかと思いました。

 Gagaクラスでは様々な言葉の誘導を層のように重ねていくと大手さんは仰っていましたが、このような要素の組み合わせが身体に負担をかけない自由な動きに繋がるということを実感をもって学ぶことができました。

☆小㞍健太「コンテンポラリーダンサーのための基礎バレエとバレエメカニズムの応用」

 このクラスでは、バーレッスンを行った後にバレエメカニズムを応用した即興を行いました。その中でも、身体の部位の意識を持つワークにおける学びが大きかったと感じます。

 小㞍さん自身の動き方を見ていると、動きの軌道が明確で、不安定な動きがあっても必ず次の動きに繋がっているような印象を受けます。即興において、自分がどのような動きをしているのか客観的な眼差しを持つことは難しいです。クラシックバレエのフォルムを応用しながら、身体の各部位のベクトルの整理、体を取り巻く空間の立方体から動きを創りだすことは、ある意味では客観的に自らの動きを観察しながら踊っているともいえます。さらにこういった即興により、ベーシックなフォルムを使用しているにも関わらず、普段躊躇してしまうような動きがうまれることも多く興味深いと感じました。クリアな動きだけが表現ではないものの、自らの身体へのクリアな視点を持つことは重要だと実感しました。

 また、ペアワークで相手のある部位を自分の身体の部位に置き換える即興も行いました。これも先程述べたことと同様のことが感じられましたが、同時に各部位の限界や制限に関しても改めて気づくことがありました。腕と同じことを脚はできない、しかしそれを変換してみることで脚にはできない動きを腕に投影することができます。少し考えて、かつ考えすぎず柔軟に各部位の動きを探るこのようなワークを、今後もトレーニングしたいと思いました。

 これらことに加えて、小㞍さんは大手可奈さんや安藤洋子さんのクラスも受けられていたので、クラスの途中でその応用が出てくることがありました。インプットした情報を解釈して身体に落とし込んだ一例を体感しているようで、これも非常に興味深く感じました。


☆安藤洋子「フォーサイス・テクニックとその多様性」

 このクラスにおける一貫したテーマは「押しながら引く」ことでした。一見矛盾しているように感じるこのことについて、多角的なアプローチで学んでいきました。初めはペアでタオルの端と端を持ち、手を離したらその体勢ではいられないような状態を作ってそのテンションを変えずに動くワークをしました。その後、自分の身体の中にそのテンションを作り出し、そこでうまれる身体の充実感を保ちながら動いていきました。安藤さんは、テンションがなくなったらバランスを維持できないその状態を「オフバランス」と表現しました。

 この「オフバランス」や「テンション」は私のイメージしていたものと違い、「押しながら引く」ことによってうまれる状態でした。これを読んでいる方も読んでいるだけでは理解し難いと思いますが、それがどういうものなのか、その答えはその人の(ペアの場合は双方の)実感に基づくということでした。最初はよくわかりませんでしたが、身体の点や空間に中心をおく意識を使った「押しながら引く」ことへの異なるアプローチを行ったり、ペアでフィードバックをしながら探っていったりすることで、少しずつわかっていきました。できたときは自分でもペアの相手も「できた」ことの実感が得られるのがとても不思議でおもしろかったです。

 後半ではこれらを応用した即興を行いましたが、わからなくなって動けなくなることが私自身よくありました。動き方がわからないということです。しかし、そこで自らの実感に基づいて「押しながら引く」意識を持ったまま動くと、身体が思わぬ方向に自然と動いてしまうことがありました。これは適当に踊っていたらわからない感覚であり、感覚の理論を実感(感覚)によって理解したうえで得られる身体の自由だと感じました。また、見ている側としてもこの動き方ができている時は圧倒的に何かが違いました。このクラスは、学びを超えた不思議な体験に近いものでした。この感覚を忘れないように、自分を驚かすような身体の自由をもって新しい動きを創りだしていきたいと思います。