TAMA
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幼少期から慣れ親しんできたけん玉の身体性とリズムは、私の身体に深く刻まれている。
けん玉に「もしかめ」という基礎的な技がある。童謡「うさぎとかめ」のリズムと共に、玉を一方の皿からもう一方の皿へと絶え間なく移し続けるこの技は、単純でありながらも繰り返すことでトランスのような境地へとプレーヤーを導く。けん玉の昇段試験では、この基本動作を数百回、あるいは千回と続けることが求められる、いわばけん玉の基礎中の基礎となる技である。この催眠的とも言える反復の中で、私は次第に自分が溶けていくような感覚を覚える。この無限に続く運動の没入感に身を任せるうち、私の輪郭がぼやけていくのを感じるのである。
作品タイトル『TAMA』は「玉」から着想したものだが、同時に「魂」や「霊」といった観念も喚起する。私にとってけん玉とは、自分自身の「たま」のあり様を捉えようとする儀式的な行為であり、それは鏡と向き合うことと似ている。鏡に映し出された「私」と相対することで、私は鏡の中に降りていくのだ。
この作品は、けん玉の持つ身体性と音楽性を解体することであらわになる「私」という枠組みの曖昧さをあぶり出し、自己認識において生じるズレを見つめようとする、いわば自画像的な試みである。
鈴木竜
演出・振付・出演:鈴木竜
出演:岡本優
音楽:音無史哉、タツキアマノ
衣裳:藤谷香子
リサーチ協力:植松侑子、堀川七菜
プロデュース:唐津絵理(愛知県芸術劇場/Dance Base Yokohama)
プロダクションマネージャー:世古口善徳(愛知県芸術劇場)
舞台監督:川上大二郎(スケラボ)
舞台監督助手:小黒亜衣子
照明デザイン:櫛田晃代
音響デザイン:中原楽
初演: 2024年11月(愛知県芸術劇場)*「間(あいだ)の時間」にて
企画・共同製作: 愛知県芸術劇場、Dance Base Yokohama
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◆PERFORMANCE
・11月 愛知県芸術劇場 小ホール(愛知)「間(あいだ)の時間」*初演
・12月 Dance Base Yokohama(神奈川)YPAM連携プログラム
◆INTERVIEW
紙背 愛知県芸術劇場×Dance Base Yokohama「パフォーミングアーツ・セレクション」|鈴木竜×岡本優『TAMA』鈴木竜インタビュー