2025年度レジデンスプログラムにつきまして
ご報告
2025年度 Dance Base Yokohama(DaBY)レジデンスプログラムに寄せて
Dance Base Yokohama(DaBY)は、2025年に開館5周年を迎えます。
この節目の年にあたり、私たちはあらためて「アーティストにとって創作とは何か」「支援のあるべき形とは何か」を見つめ直しています。
本年度も、35歳以下のアーティストを対象にレジデンスプログラムの公募を実施しました。創作に必要な空間の提供に加え、広報・技術・制作費の支援を通じて、アーティストが自身の活動をより確かなかたちで展開できるようサポートすることを目的としています。
今回も多くの意欲的なご応募をいただきましたが、限られた予算とスペースを照らしながら一つひとつの企画に真摯に向き合いながら選考を行いました。
重視したのは、社会や他者との関係性をどのように築こうとしているのか、自身の視点や問いをどう身体に落とし込み、表現しようとしているのか。そして、DaBYという場をどのように活かし、さらにはその枠を超えて広げていこうとしているのか、という点です。
その結果、2025年度は6組のアーティスト/チームをレジデンスプログラムに迎えることとなりました。いずれのプロジェクトも、この時代において私たちに新たな視点や問いを投げかけてくれるものと確信しています。
なお、今回は選考に至らなかった方々の中にも、創造性に満ちた企画や強い問題意識を感じさせるご提案が多数ありました。選考結果はあくまで今回のレジデンスの枠組みに照らしたものであり、採択の有無がプロジェクトの価値や良し悪しを示すものでは決してありません。
ぜひまたの機会にご応募いただき、それぞれの歩みの中で培われた創作をお聞かせいただければと思います。皆さまと別のかたちでご一緒できる日を心より楽しみにしております。
DaBYは、制度としての支援にとどまらず、現場での対話や実践の積み重ねを通じて、共に成長していける場でありたいと願っています。
今年もまた、この場所から豊かな創作と出会いが生まれることを心から楽しみにしています。
引き続き、皆さまのご支援を賜りますよう、どうぞよろしくお願い申し上げます。
Dance Base Yokohama
採択されたプロジェクト(計6組)
『ニューダンス・テクノロジーズ』
団体名 ニューダンス研究会
松本奈々子、西本健吾/チーム・チープロ + 桜井圭介 + 捩子ぴじん
「ニューダンス・テクノロジーズ」
『Time to Stop』
Priyakshi Agarwal
このプロジェクトは、身体化されたリアリティを通して、社会から疎外された人々、特に女性や有色人種が直面する、公共空間における性的・人種的暴行に光を当てることを目的としている。このパフォーマンスは、歴史的・現代的な暴力の重荷を背負いながら、人種化された身体として公共空間を占有することの意義を検証することを核としている。
個人と集団の語りを織り交ぜることで、暴力の連鎖を断ち切り、安全と尊厳に対する私たちの権利を再確認し、人種化された身体で生きることの具体的な課題に取り組み、強力な抵抗の形としての連帯を強調することを目指す。
『RUN BABY RUN』
Nadine Fuchs + Marco Delgado + Lili-Marlo Delgado Fuchs
RUN BABY RUNは、世代をまたいだ視点で家族という概念を探求している。この振付リサーチは、ダンスを通じた伝達のプロセスを具現化するもので、家族を築きつつある2世代のダンサーを結びつけている。Nadine、Lili-Marlo、Marcoは全員ダンサーであり、そのうち2人は30年間踊り続けているが、1人はまだ修行中である。
「人を結びつける目に見えない絆、伝承されてきたもの、世代を超えた身体の記憶について私たちは問いかける。長い時間をかけて伝えられてきた身振り、姿勢、表情、身体に刻み込まれた先祖代々の知識、そして世代を超えて響き合う感情に焦点を当てる。親子関係や親族関係の形が常に進化している社会で、家系に属すること、血縁関係を超えた家族の一員であることは、何を意味するのだろうか。過去20年間、私たちの創作活動はコラボレーションによって形作られてきました。今回のプロジェクトでは、娘という新しい形のコラボレーションを模索する。この作品では、私たちの家族を独りよがりに美化するのではなく、現地の素材を用いて表現することで、身体―私たちの身体―を演出する。」
『子宮内膜チョコレート』
竹中香子 + 太田信吾 + 内橋和久
子宮内膜症は、現在10人に1人の割合で女性に発症するといわれている、一般的な婦人科の病気である。主な症状には、激しい月経痛、性交痛、不妊症などがあげられるが、特に男性にはあまり知られていない。女性が「痛み」に慣れすぎているあまり、少しくらい痛いことはデフォルトと認識していることで、発見が遅れるケースもある。
本企画では、リサーチに基づいて書かれたテキストをもとに、 男性パフォーマーが「イメージ」の力で、子宮内膜症の身体を想像する。演劇では、役の心情を想像することが多いが、このパフォーマンスでは役の身体感覚(ある身体が置かれている状況)に特化して想像することを試みる。最終形態としては、パフォーマー自身がテキストを発話するために必要なイメージそれ自体が、パフォーマーの身体を振り付けているような状態を目指し、痛みの「分有」の可能性を問う。
『現幽体のレメディエーション(仮)』
団体名 pito
山口みいな + 宇佐美奈緒 + 大江量 + 大貫友瑞 + 都路拓未 + 花形槙 + 吉田拓
コラボレーティブ・リサーチャー:平尾悠太朗
デジタル化の進展とポスト・トゥルースの時代において、〈
「現幽体」とは、現世(うつしよ)と幽世(かくりよ)
資本主義という大きな機械の一部に埋没した身体は、
レメディエーションを冠する本企画では、
『SLOOOOOOW』
Parini Secondo + Bienoise + 大道寺梨乃
『SLOOOOOOW』は、Parini Secondo とAlberto Ricca/Bienoise による振付・音楽プロジェクトの第2章であり、1990年代の東京のクラブシーンで誕生したパラパラダンスとユーロビート音楽に着想を得て制作されています。
この作品では、当時の振付シークエンスを、Bienoise が書き下ろしたオリジナル楽曲を極端にスローダウンさせた音楽に合わせて再構成することで、その形を成します。
YouTube上でよく見られるスローモーション動画のような逆説的な時間感覚を舞台上に具現化し、カフェインのように刺激的なダンスを瞑想的な行為へと変換します。そして、過剰な生産性の時間とパフォーマンスの時間との関係を問い直します。
『SLOOOOOOW』は、Parini Secondo の「パラリスト(Para Para を踊る人々)」たちが、滞在先の地域に住むパラリストたちと出会い、ワークショップを通じて最終的なパフォーマンスに至るという、パフォーマティブな装置として構想されています。
その成果は、超スローペースのパラパラダンスを愛する国際的なグループとして舞台上に立ち現れます。
上記6つのプロジェクトを2025年度レジデンスプログラムへと採択いたします。
Dance Base Yokohamaは各プロジェクトのために制作費の支援と制作業務、スタジオ利用のサポートを行います。
昨年度から活動を継続する方々(敬称略、50音順)
DaBYレジデントアーティスト
小暮香帆
橋本ロマンス
ハラサオリ
平原慎太郎
Wings対象アーティスト
阿目虎南
岩渕貞太
小野彩加 中澤陽 スペースノットブランク
柿崎麻莉子
鈴木竜
高橋萌登