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Dance Base Yokohama

Dance Base Yokohama

DaBY パフォーミングアーツ・セレクション 2021

 多彩に展開する現代ダンスも、その源をたぐり寄せればつい100年ほど前のモダニズムに突き当たる。DaBYオープニング企画として「ダンスの系譜学」という視座から3人(酒井はな、中村恩恵、安藤洋子)の舞踊家の参加を得て実現した今回の舞台は、ダンスの「継承」という課題を具体的な創作を前提として繋げてゆく、ひとつの方法として注目すべき企画となった。(注:安藤洋子の作品はみられなかった。)

 酒井はなはM.フォーキン振付の近代バレエの傑作「瀕死の白鳥」を、中村恩恵はモダン・バレエを代表する一人であるイリ・キリアン振付による「BLACK BIRD」を、それぞれステップボードとして新作を発表するという刺激的な企画となった。すでに愛知芸術文化センターで初演をすませているものの、以来今日までの創作期間に、アフタートークやカジュアルなディスカッション、アーティストへの濃やかなサポートが可能となったのは、このDaBYというカジュアルで柔軟なスペースがあったからこそと思われる。

 

酒井はな『瀕死の白鳥』/『瀕死の白鳥 その死の真相』

 あの「瀕死の白鳥」が何故死ななければならなかったのか、なんて誰も考えもしなかった。死さえも永遠のフォルムに美しく結晶させてしまうバレエという芸術に対して、今回共同創作の岡田利規は、事実としての死には理由があるに違いない、と素朴な疑問を発した。前半はモダン・バレエの傑作ミシェル・フォーキン原振付の名作『瀕死の白鳥』に、酒井はなが改訂をくわえて踊る。特に腕の動きが纏わりつくような上体のしなやかさを活かした振りが印象的だ。
 一曲踊り終えると、酒井はダンサーの素顔となって、体をストレッチや柔軟で整えながら現実の時間に戻る。マイクを装着、そのまま後半へ移り、劇作家岡田利規の演出・振り付けによる新解釈『瀕死の白鳥 その死の真相』が始まる。全編にわたり演奏しながら伴走するのはチェリストの四家卯大。酒井は四家を相手に、体の異変を語り始める。100年以上の歴史をもつ伝説のバレエが、なぜそのように踊られるのか、思わず問いかける率直な疑問が、体の異変をかかえながら踊る一羽の鳥の姿に重なり、終に砂嚢に蓄積したプラスチック片を嘔吐しようと苦しむ一羽の鳥の現実となる。観客はこのような状況を内心滑稽に感じながらも、「瀕死の白鳥」を環境破壊として捉え直した岡田の問題提起を、まさに現実の問題としてリアルに感じたに違いない。

 

中村恩恵『BLACK ROOM』/『BLACKBIRD』よりソロ

 薄暗い舞台にわずかに四角い空間を暗示する照明があてられると、そこは息詰まるような閉鎖空間となって、中村を囲繞する。ソロで踊ることの不安、暗やみの中を手探りで進む恐ろしいまでの孤独と中村は向き合っている。唯一の手掛かりとなる言葉を手探りで引き寄せるようにして、中村は幾度も自省的な言葉を発し続け、発話することによって極めてデリケートな生のバランスを保っている。闇を彷徨う手指がわずかにひき寄せる言葉を頼りに、彼女はいよいよ迷路の深みにはまってゆく。これは彼女が自身の存在を問う根源的な問いかけであり、最後は闇の中に悲痛な叫び声だけが鋭く跡をひくように残り、前半の『BLACK ROOM』が終わる。
 後半、キリアンが中村のために振付けたという『BLACKBIRD』よりソロの一部を踊った。一人孤独にもがき苦しんでいた彼女が翼を得た鳥のように、毅然とした姿で現れる。『BLACK ROOM』から『BLACKBIRD』への流れを通して感じるのは、まさに中村が師キリアンから受け継いだダンスが彼女自身、苦しみの果てに見出したものであり、彼女の体をとおして体現され、羽ばたいているということだ。継承という行為がいかに真摯な営みであるのか、中村はこの30分に満たない短い作品で示した、その静謐な明確さに心をうたれた。

 

鈴木竜「When will we ever learn?」

 鈴木竜作品(演出・振付)。ドラマトゥルクに丹羽青人。舞台上に示されたスクエアーなダンス・スペース、その外側と内側の領土がはっきりと分けられている。さらに外側に立つダンサーは常にこの四角の領域の内側で踊られることをじっと見ている。ここでは見る事が相手を支配することであるかのようだ。つまり監視の視線のもとに急かされるかのように、あるいは挑発的に組み合う2人のダンスが編みこまれていく。強烈な視線の介入によって、支配する側と支配される側が次第にその立場を入れ換えながら提示されている。
 やがて同じ動きのフレーズが正確に反復されていることに気付く。それによって、1人の男の内部が展開図となって複数のダンサーによって担われているようにも見える。つまり1人の男が凝視しているのは他者ではなく自分自身であり、外に反映された自分の像だということ、そしてそれは敵対的に向き合うことしかできない非情な鉄則のように、互いの力がぶつかり合い、闘争心のようなものを加速させるが、次の瞬間ふと中断される。それはちょうど脳裏に強烈に焼付いたある一瞬の情景が脈絡もなく次々と呼び起こされるような、苛酷な追憶のフレージングとなって繰り返される。鈴木竜ほか、中川賢、飯田利奈子、柿崎麻莉子というダンサーを得て初めて可能な、スリリングなダンス空間だった。

2021年12月10日 [会場:KAAT 神奈川芸術劇場<大スタジオ>] 観賞
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