『ダンステレポーテーション』活動レポート#6

幅田彩加インタビュー
(聞き手:山﨑広太)

山﨑広太さんの「対話」をコンセプトとした新プロジェクト『ダンステレポーテーション』が進行中です。
山﨑さんと11名のパフォーマーが、新型コロナウイルス流行下での創作活動を、文字通り手探りで行っています。

「基本的に、振付家とダンサーは、場と時間を共有することで作品制作を行っていきます。それが不可能となった現在、振付家は、どのようにしてダンサーとの関係を築き作品を制作することができるのでしょうか。場所も時間も超えたダンスの在り方を探るという意味で、この挑戦にたいして『ダンステレポーテーション』と名付けました。」
(山﨑広太『ダンステレポーテーション』ステートメントより抜粋)

クリエイションのプロセスは、山﨑さんがビデオ通話で各パフォーマーにインタビューを行うことから始まります。次に、山﨑さんがインタビューからインスピレーションを得て紡いだ言葉をパフォーマーに送ります。そして、パフォーマーはその言葉を起点に創作することで山﨑さんに回答をします。

今回は幅田彩加さんへのインタビューの様子をお届けします。
アーティスト活動と大学でのお仕事を両立されているお二人の、短くも充実した対話となりました。
(テキスト・編集:吉田拓)

幅田彩加 | Ayaka Habata
Ayaka Habata

国内の全国舞踊コンクールで1位を多数受賞。2014年国際振付コンクールでグランプリ受賞。現在は国内外で舞台に立ちながら、大学講師として講義や研究、指導を行っている。

山﨑広太 | Kota Yamazaki
Kota Yamazaki

笠井叡に師事。07年にニューヨーク・パフォーマンス・アワード(ベッシー賞)、13年現代芸術財団アワード、17年ニューヨーク芸術財団フェロー、18年グッゲンハイム・フェローの各賞を受賞。20年ニュージーランドのFootnote New Zealand Danceの新作「霧、神経、未来、オーシャン、ハロー(木霊する)」でオンライン・クリエーションに挑んだ後、NZ国内、Dance Base Yokohama、北米ツアー予定。
ボディ・アーツ・ラボラトリー主宰。http://bodyartslabo.com
ベニントン大学に所属。


山﨑
幅田さんは、どのようにダンスをしてこられたのですか?
幅田
子どもの頃から、黒沢輝夫さん、下田栄子さんのスタジオに通って、モダンダンスを習い、多くのコンクールに出場しました。ダンスを学ぶために進学した大学では、身体一つで表現することだけでなく、総合芸術として創作することや、様々な他者と一緒に踊る機会に触れました。大学院在学中にはニューヨークに2年間滞在したのですが、その時に広太さんのワークショップに参加しました。
山﨑
そうでしたね。ありがとうございました。
幅田
現在は講師として大学に勤めながら、振付家やダンサーとして活動しています。
山﨑
ダンス作品を創作する際、僕はコンセプトを練るところから始めるのですが、幅田さんはいかがですか?
幅田
私の場合は常日頃考えていることから始まります。本を読んだり、生活のなかで起こったりした事を掘り下げていき、それが身体と結び付いたところから、創作が始まります。ストーリーや音楽からダンスを作る方もいますが、私は言葉から創作するタイプだと思います。
山﨑
創作では、どのような言葉を使われるのですか?
幅田
なぜこのように感じたのだろう?とか、なぜそのような事が起こるのだろう?というように、ある事象における偶然性と必然性を考え、その時に生じる身体感覚の言葉から動きを作っていきます。とはいえ、ただ言葉に忠実に作っていくということではありませんが。そして、言葉といっても論理的に使用するだけではなく、感情的な作用を目的に使うこともあります。
山﨑
お渡しする言葉を書くために、参考としてお聞きしたいのですが、最近見て印象に残っている映画はありますか?
幅田
ダンス作品を創作するためのリサーチも兼ねて、映画『戦場のピアニスト』と『戦場のメリークリスマス』を見ました。どちらも描写が印象に残っています。
山﨑
大学の授業はオンラインでされていますか?
幅田
そうですね、今はオンライン授業をしています(※インタビューは5月4日に行いました)。受け持っている人数は授業によって、10人〜200人くらいの幅があります。身体表現や、発想を訓練するような授業を担当しています。
山﨑
新型コロナウイルス流行下での変化など、感じられていることはありますか?
幅田
学生に教えたり、仕事場と行き来する事ができ、お給料も頂いているので、私の生活自体は危機的な変化はしていません。ただ、県外の家族に会いに行くことができなかった時には、隔離されていることを実感しました。
もっと閉塞感を感じるかと思っていましたが、むしろビデオ通話などで知人と話す時間は増えました。前よりも知人との距離が近くなったように思いますが、物理的な距離を伴う「本当の距離」ではない事が不思議な感じがします。
山﨑
ダンスについてはいかがですか?
幅田
パフォーマンスとして踊る機会がなくなったこともあり、自分にとってダンスとは何なのだろう?と考えています。他者に見せるためではなく、踊るということ自体に向き合うというか。自分のためとしてのダンスはあり得るのだろうか?と。
山﨑
例えば、当然のように行っていた場所に行けなくなったことが、そこに自分がいないということを想像するきっかけになると思います。そういった変化が創作にどのような影響を与えるのかということに、僕は興味がありますね。
最後にリサーチをさせてください。頬に指で触れて、その感触からイメージする言葉を教えてください。
幅田
すぐに浮かんだのは「ゴム」「避けられる」「入れない」という言葉です。
山﨑
わかりました。本日はお話を聞かせていただいて、ありがとうございました。言葉を綴ってお送りしますね。
幅田
ありがとうございました。

インタビューはいかがでしたか?
ここからどのような言葉と、それに対するリアクションが生まれるのでしょうか。
次回のレポートは金子愛帆さんへのインタビューを予定しています。
引き続き、ダンサー同士の対話をお楽しみください。

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