ProLab 第1期 乗越たかおの”舞踊評論家【養成→派遣】プログラム”
ProLab Dance Critic [Training -> Dispatch] Program
*成果発表ページを公開しました。(12/1更新)
*乗越たかお氏より審査終了のコメントを掲載しました。(7/31更新)
*派遣日程確定のためスケジュールを変更しました。(4/11更新)
◆乗越たかおよりコメント
これはプロの舞踊評論家を養成する、前代未聞のプログラムである。
「ダンス作品と評論は両輪である」と言われるが、残念ながら舞踊評論のアップデートは十分とは言えない。そうした機会自体がないに等しかった。作品と評論の望ましい関係を築き上げるために、若い書き手の養成が急務である。
実際海外では多くのフェスティバルや劇場が、直接舞踊評論家の養成に乗り出している。
そこで『コンテンポラリー・ダンス徹底ガイドHYPER』など日本で最も多くのコンテンポラリー・ダンスの本を出版し、累計100以上の国内外のダンスフェスティバルを巡り、日本のコンテンポラリー・ダンスを黎明期から見続けてきた舞踊評論家の乗越たかおが、本気で舞踊評論家の養成に乗り出す。 乗越が考案したプログラムを半年かけて受け、最終的には2名を海外の国際ダンスフェスに派遣しようというのだ。
■動け。そして飛び立て
本プログラムはよくある「書き方教室」ではない。相当の筆力を当然に持っている者が、さらにプロの舞踊評論家として自分のスタイルを発見するためのものだ。
受講者は5名程度。舞踊評論の依頼原稿未経験の若者も歓迎する。乗越がメンターとして評論家に必要な知識と40年間の経験を伝え、「伝わる評論の力」を磨きつつ、受講生自らのスタイルを確立させていく。
そして乗越とともに2名が海外のフェスへ派遣され、世界のダンスに直接触れて、見聞と人脈を広げるチャンスを手にすることになる(第1回はスプリング・フォワード(ドイツ)*1 を予定)。
講座はZoom参加もOKなので地方在住でも問題ない。しかし全員対面の授業も行う(遠距離者への交通費の補助あり)。
このプロジェクト実現には大切なパートナーの協力があった。
講座に関するあらゆる面、プロジェクト全体の事務局をDance Base Yokohamaに担っていただいた。ご存じの通りダンス環境の革新のために先鋭的な活動を続けている日本が誇るダンスハウスである。
また海外派遣については、日本の様々なアーティストとヨーロッパとの交流を長年支援してきたEU・ジャパンフェスト日本委員会が助成してくれている。
■舞踊評論は、これからが面白い
ここまで読んで、応募しようかどうか迷っているあなたの脳裏を、こんな心配が横切っているかもしれない。
「舞踊評論を書く場がないのでは?」
だがそういう人のいう「書く場」とは、ほとんどが新聞や紙の雑誌といった旧式のメディアしかイメージしていないことが多い。
しかしオレは、これからはオレよりも若い書き手、デジタルネイティブ世代がネット環境を使い倒して、新しい「食っていける」ダンス言語環境を作り出すと信じているのだ。
たとえばドイツでは、すでに「投げ銭」形式の舞踊評論言語空間を作るプロジェクトが始動している。ポイントは対象読者がドイツ国内ではなく世界だということ。良い物を書けば、読者の数と収入はケタ外れに大きくなる可能性がある。
しかもいま強力に進化し続けている自動翻訳を使えば、これからどんどん壁はなくなっていくだろう。実際オレが書いた日本語のレビューについて、海外から普通に問い合わせがくる。
今話題のChatGPT、GPT-4の衝撃が一段落した頃に、「情報」を越えた真の「評論」が世界規模で求められる時代になる。キミらが目を向けるべきは、その未来である。
いま様々な分野で「システムに依存して空虚な承認欲求の肥大工場になりつつあるSNS」への警鐘が鳴らされ、「身体性の復権」「リアルな体験とつながり」の重要性が指摘されている。
今後「ネットユーザーと身体表現の新しい関係」は、かつてなかったほどの切実さで求められるようになるだろう。両者をつなぐ舞踊評論は、その責任を自覚しなければならない。
本プロジェクトで派遣する予定のフェスティバル「スプリング・フォワード」には、ダンスライター養成のためのプログラム「スプリングバック・アカデミー *2 」があり、いかに舞踊評論が重要視されているかがわかる。
舞踊評論が面白くなるのは、まだまだこれからだ。
それには評論家としての武器を磨き、世界へとつながる必要がある。その両方を、このプロジェクトはキミに与えようというのだ。
応募を待つ!
*1 Spring Forwardは、ヨーロッパのアーティストネットワーク Aerowaves が主催するダンス・フェスティバル。開催都市は毎年持ち回りで、ヨーロッパ全土から新しい才能が集まる。https://aerowaves.org/spring-forward/
◆スケジュール
2023年8月から2024年6月まで
2023年
4月 応募開始
5月19日 課題公演 KIDD PIVOT『REVISOR』(愛知)
5月27,28日 課題公演 KIDD PIVOT『REVISOR』(神奈川)
6月30日 応募締め切り
7月 受講者決定
8月
〜 月に1回の講義
12月
2024年
4月 スプリング・フォワード(ドイツ)へ派遣、レポート執筆
→
5月22日〜24日 スプリング・フォワード取材のため開催地ダルムシュタット(ドイツ)へ派遣(渡航費・現地宿泊費・公演チケット代支給)、レポート執筆(4/11 更新)
6月 レポート発表(媒体は応相談)
・講義予定スケジュール
第1回講義+GAGA受講 8月21日 全員対面必須 遠距離者への交通費支援あり
第2回 9月12日(火) 第3回 10月10日(火) 第4回 11月14日(火) 第5回 12月12日(火)
第2回以降の時間はいずれも20時〜22時。ただしやむを得ぬ事情により、日時や時間が変更になる可能性があります。
・第2回目以降のオンライン受講可
ただし、第1回講義(8月21日)の講義はGaga/people(講師:柿崎麻莉子)を受講していただくため、受講者全員での対面授業を行います。
プログラム参加が決定した場合は、事前に日程の調整をお願いいたします。
◆応募条件
・応募資格 : 「18才以上。次代を担うプロの舞踊評論を目指し、乗越たかおの講義を受ける意欲がある者」
※応募の際はDaBYメンバーズへ登録をお願いします。(https://dancebase.yokohama/main2/members)
・参加費 : 20000円(5名の合格者のみ必要。応募は無料)
・課題はKIDD PIVOT公演『リヴァイザー/検察官』の評論2000字。ただし自分の評論スタイルを打ち出したものであること。評論の最後には、自分の評論スタイルを分析し、その特長を100字以内で書くこと。
※愛知(2023年5月19日)、神奈川(2023年5月27日~2023年5月28日 )公演のいずれでも可。
(https://www-stage.aac.pref.aichi.jp/event/detail/000961.html)
(https://kiddpivot.dancebase.yokohama/)
「地域格差の問題はあるが、現代の最重要振付家であるクリスタル・パイトの公演を見逃すようではプロはおぼつかない。将来的にプロを目指す以上、継続的に一定数以上の公演を見続けるのは必須条件である 乗越」
・その他必要事項 : 氏名、年齢、住所、職業/所属、応募理由を100字程度
・提出先 : Googleフォーム(https://onl.tw/cN1SKfM)
・〆切: 2023年6月30日厳守
合否の通知は評論審査通過者のみに行い、ZOOMによる面談を行います。
審査完了時期は7月中になります。あらかじめご了承ください。
・問い合わせ先 : contact@dancebase.yokohama
◆講師紹介
乗越たかお
作家・ヤサぐれ舞踊評論家。株式会社ジャパン・ダンス・プラグ代表。06年にNYジャパン・ソサエティの招聘で滞米研究。07年イタリア『ジャポネ・ダンツァ』の日本側ディレクター。19年スペインMASDANZA公式審査員。現在は国内外の劇場・財団・フェスティバルのアドバイザー、審査員など活躍の場は広い。
著書は『コンテンポラリー・ダンス徹底ガイドHYPER』(作品社)、『どうせダンスなんか観ないんだろ!?』(NTT出版)、『ダンス・バイブル』(河出書房新社)、『ダンシング・オールライフ 中川三郎物語』(集英社)、『アリス ~ブロードウェイを魅了した天才ダンサー 川畑文子物語 』(講談社)など多数。
現在、月刊誌「ぶらあぼ」コラム『誰も踊ってはならぬ』連載中。新書館のバレエチャンネルで連載していた『バレエファンのためのコンテンポラリー・ダンス講座』は単行本化作業が進行中。
・第1回講義 Gaga/people講師
柿崎麻莉子
DaBYレジデンスアーティスト
香川県出身、元新体操選手。
Batsheva ensemble Dance Company(2012-2014)に所属後、L-E-V Sharon Eyal|Gai Behar(2015-2021)に所属し、世界各国で公演・WS指導を行う。2011年韓国国際ダンスフェスティバル金賞、2013年度香川県文化芸術新人賞、2014年Israel Jerusalem Dance Week Competition、2020年日本ダンスフォーラム賞、2021年日本ダンスフォーラム賞、など受賞。2021年カルチャーセンター「beq」を熊本にOPENし、文化や芸術をカジュアルに楽しめる場を目指して活動中。Gaga指導者。2022年度DaBYで創作した『When wii we ever learn?』『never thought it would』出演。2023年度9月には、アリス・ゴドフリーとの新作を愛知県芸術劇場で発表予定。
◆クレジット
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主催:乗越たかお(株式会社ジャパン・ダンス・プラグ)/Dance Base Yokohama
助成:EU・ジャパンフェスト日本委員会